知られざるラテン音楽の真髄

 

Los reimpagos de la plena/Restauracion(GF9911072) \2500

プレーナの稲妻

カリブ海に浮かぶ島、プエルトリコの音楽で、サルサを生んだ母方ともいわれるボンバやプレーナを紹介します。コロンブスがカリブ海に到来し、プエルトリコがスペインの占領下におかれて以来、アフリカから奴隷として連れて来られた黒人たちの血を引く音楽が、ボンバです。太鼓による、跳ねるような強烈なリズムが特色です。一方プレーナは、黒人系音楽とスペイン系音楽が混ざりあったもので、ボンバもプレーナも今のプエルトリコ音楽を代表する音楽なのです。

ボンバといえば、まずラファエル・コルティーホを聴くべきだし、プレーナならラファエル・セペーダを抜きには考えられません。二人とも同じラファエルですから覚えやすいですよね。どちらもラファエルさん。

しかし、今回紹介するのはプレーナ、ボンバの若手の集団「ロス・レランパゴス・デ・ラ・プレーナ」、「プレーナの稲妻」という意味のオルケスタです。イントロに大御所ラファエル・セペーダ、モン・リベーラらの生声を導入し、グループ名にあるごとく稲妻のようなボンバ、プレーナが演奏されています。15名余りのメンバーが各自楽器と生声でもって、一丸となって疾走しているかのようなサウンド。録音テープを逆回転(?)早送り(?)させたり、子どものキュートな声を入れたり、トランペット、トロンボーン、サックスが錯綜し、ピアノ、ギター、クアトロ、バイオリン、マリンバ、太鼓軍団が怒涛のように流れ込む勢い。歌声はイスマエル・リベーラをヘタクソにした感じで、棒歌いっていえばいいのかしら。なかなか味があり、プエルトリコの美意識ってこんなところにあるのだろうと思わせられます。特に6曲目、7曲目は踊らずにはいられない、さまざまなアイデアと美しさに満ちたものです。サルサのダンス・パーティで、わたしはこの2曲をよくかけます。

ピエロのジャケット。哀しげにうつむくピエロと奮起しているかのようなピエロ、相反するピエロをだぶらせたジャケットも目を引くでしょう。アルバムのタイトル「レスタウラシオーン」は「回復」というような意味で、音楽の方も、プエルトリコの伝統音楽に対して前向きの姿勢が感じられる、すばらしいアルバムです。

 

The Brooklyn Sounds/Libre-Free(Mary Lou 59768/2)  \2500

  トロンバンガの魅力

トロンボーンって、何でこんなにサルサに合うのでしょう。わたしはトロンボーンがフィーチャーされたサルサ(トロンバンガというのです)が、大好きです。わたしの勝手な印象なのですが、トロンバンガはストリートの吹き溜まりにたむろするチンピラを思わせるのです。

さて、トロンボーンのぶ厚くて迫力ある音を、サルサに最初に取り入れたのは誰でしょうか?そこのところは専門家ではないので、はっきりとはいえませんが、エディー・パルミェーリかモン・リベーラかと諸説あります。で、サルサのトロンバンガを聴くのなら、まず、エディー・パルミエーリやウィリー・コローンというのも誰もが認めるところでしょう。

しかし、サルサ・トロンバンガの魅力として今回紹介するのは、「ザ・ブルックリン・サウンド」というグループです。かといって、わたしも詳しいことはほとんどわからない9人組のバンドです。わからないのに、紹介したいのにはわけがあります。

リーダーはフリオ・ミリャン、トロンボーン奏者です。トロンボーン二人に、ピアノ、ベース、リズムセクション、ボーカルというシンプルな構成。ここからは推測ですが、メンバーのほとんどはプエルトリカン。ブーガルー、サルサの音質から、時代は70年代前後でしょう。ニューヨークのブルックリンに住む人たちで、アルバム・タイトル「リーブレ」にあるごとく己の自由を歌っています。

グァグァンコー、ボレロ、ソンを組み合わせた暗い音質、これでもかこれでもかと吹きまくるトロンボーンに、なだれ込むようにたた叩きまくるティンバレス。「アーフリカ」のかけ声にジャージなサウンド。そして、ピアノのトニー・オルテガはただものではありません。ビートとメロディーをキッチリ刻むかれのソロには、胸がしめつけられる思いです。決してウマイとはいえないボーカルも、その切々とした歌声がリアルなのです。コロ(コーラス)も切なくていいね。これが、ストリート・サルサというものではないだろうか。

ファンキーでカッコイイ、70年代初期のサルサの等身大を求めるなら、ニューヨークのストリートにたむろする(?)ブルックリン・サウンドはおすすめです。

 

Lucha reyes/25Aniversario (Discos Hispanoy 205060041)\2800

ペルー音楽の女神

ペルーの音楽というとみなさん、どんな音楽を想像しますか?

「コンドルは飛んでいく」に代表されるようなフォルクローレは、世界的にもっとも有名だろうね。でも、このような曲をイメージしていては、ペルーの音楽は理解できません。ペルーには、クンビアもサルサもあるし、日本では現在沖縄を拠点に活動しているディアマンテスで有名なアルベルトさんも、ペルーからやってきましたよ。

 ペルーの音楽は大きく分けて海岸地方の黒人系音楽、ムシカ・クリオージャ、ムシカ・ペルワーノ、山岳部のワイノ、ダンサとよばれる音楽、熱帯雨林地方のアマゾンの音楽、そして、都会にみられるサルサやクンビアなどがあります。

 今回紹介するのは、その黒人系音楽、ムシカ・クリオージョを代表する女性歌手のルーチャ・レジェスです。ペルーに黒人がいるの?と思われるかもしれませんが、ペルーにも黒人が1パーセントぐらいはいるそうです。その1パーセントの黒人がもたらした音楽が、ペルーの音楽に多大な影響を与えているのです。

 ルーチャ・レジェスにわたしが最初に惹かれたのはジャケットに見られるかのじょの黒い顔と、どぎついつけまつ毛、それにでかくて厚い唇でした。そして初めてCDでかのじょの歌を聴いたときは、不覚にも涙が出てしまったのです。特に「レグレーサ」という曲は涙ポロリ。後から知ったのですが、ルーチャ・レジェスの代表曲でした。このCDの1曲目に入っていますが、みなさん聴いてみてどんな感じですか?かのじょは,死んでしまいましたが、追悼アルバムがこの20曲入りベスト・アルバムです。

 初めてルーチャ・レジェスの歌声を聴いて、黒人とか白人とか、そんなことは考えなかった。ただ、いいなあと感動して涙ぐんでしまい、特に引かれたのがバルスと言われるペルー音楽のワルツでした。ペルー風3拍子のワルツ。

 その後、バルスを歌うエバ・アイリョ−ンやルシア・カンポスという、またまたすばらしいペルーの女性歌手に出会うこととなりました。ルーチャ・レジェスはわたしにとっては、真のペルー音楽の一側面に出会った最初の女神だったわけです

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